レーザーやIPLなら、「光が吸収されて、熱に変わる」で、なんとなくイメージできます。
でも、LEDは? 赤い光などを、当てるだけ。
それで、なぜ肌に、何かが起こるのでしょう。
先に、結論から。
その答えのカギが、PBM(フォトバイオモジュレーション)という仕組みです。LEDは、“熱で焼く”のではなく、細胞(とくにミトコンドリア)が光を受け取って、反応を起こす
——ざっくり言うと、そういう考え方。
ただし、「LEDを当てれば、コラーゲンが増える」と単純には言えません。
ここが、いちばん大事なところ。
▼ この記事でわかること
- LEDが”焼く”のではなく、細胞に働きかける仕組み(PBM)
- ミトコンドリア・ATP・線維芽細胞の役割
- 「単純に効く」と、言い切れない理由(波長・量・研究の見方)
今回は少しだけ、肌の表面から「細胞の中」まで、のぞいてみます。
LEDは「焼く」のではなく、光で反応を”起こす”
PBMは、”熱で壊す”仕組みではありません。
美容医療には、光のエネルギーを熱に変えて、組織に作用させる治療があります。でもPBMは、それとは別。比較的低いエネルギーの光を利用して、細胞がもともと持っている仕組みに、働きかけるという考え方です。
もちろん、光にはエネルギーがあるので、条件によっては、熱も生じます。ただ、PBMで中心に考えられているのは、”肌を熱で傷つける”ことではなく、”細胞の反応に、働きかける”ことです。
では、細胞は、どうやって光に反応するのか。 ここから、少しだけ、生物の話に入ります。
カギは「ミトコンドリア」

細胞が光に反応する、その舞台が、ミトコンドリアです。
私たちの肌は、たくさんの細胞からできています。その細胞の中にある小さな器官が、ミトコンドリア。よく、「細胞のエネルギー工場」と表現されます。
歩く。考える。心臓を動かす。肌の細胞が働く。——こうした活動には、エネルギーが必要です。そのとき使われる代表が、ATP(アデノシン三リン酸)。細胞の”エネルギー通貨”のようなものです。
そして、そのATPを作る重要な場所が、ミトコンドリア。ここが、光の話とつながってきます。
光が届くと、細胞で何が起こる?
特定の波長の光が届くと、細胞の中で、連鎖的な変化が始まります。

PBMの仕組みには、まだ分かっていない部分もあります。 その中で、特に研究されてきた候補のひとつが、シトクロムcオキシダーゼ(CCO)という酵素(名前は覚えなくて大丈夫。ミトコンドリアでATPを作る仕組みに関わる酵素です)。
赤色光や近赤外線などが細胞に届くと、ミトコンドリアの働きやATP産生、さらに一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)などに変化が起こり、それらが細胞内の情報伝達に関わる、と考えられています。
流れにすると、こんなイメージ👇
光 → 細胞の中で受け取られる → ミトコンドリア等で変化 → ATPやシグナルが変わる → 細胞の働きも変わる
大事なのは——光そのものが、コラーゲンになるわけではない、ということ。光は、細胞が反応を起こす”きっかけ”のひとつなんですね。
「活性酸素」は、全部が悪者じゃない
ここで、引っかかる言葉があります。活性酸素(ROS)。「老化の原因」「肌に悪い」というイメージ、ありますよね。
でも、活性酸素には、もうひとつの顔があります。
確かに、過剰な活性酸素は、細胞のダメージにつながります。でも、少量であれば、細胞の中で”情報を伝えるシグナル”として働くことがある。
つまり、「活性酸素=すべて悪」ではない。体の中には、「あるか・ないか」ではなく、“どのくらいあるか”が大切なものが、たくさんあります。PBMでも、こうした細胞内の小さな変化が、その後の反応につながる、と考えられています。
肌では「線維芽細胞」が関わる
美容の話に戻すと、カギになるのが、線維芽細胞です。

肌の真皮には、線維芽細胞(せんいがさいぼう)という細胞があります。コラーゲンやエラスチンなど、肌の構造を支える成分に関わる細胞です。
家にたとえるなら——コラーゲンやエラスチンが「柱・骨組み」、線維芽細胞は、それを作ったりメンテナンスしたりする”職人さん”。
赤色光や近赤外線などを使ったPBMでは、この線維芽細胞の増殖・働き・コラーゲン産生などとの関連が、研究されています。
光を当てる → 細胞内で反応 → 線維芽細胞などの働きに影響 → 肌の状態にも変化が現れる可能性がある
——という筋道です。
ただし「当てればコラーゲンが増える」とは、単純に言えない
ここが、いちばん大事です。
ここまで読むと、「LED → ミトコンドリア → ATP → コラーゲン」と、一直線につなげたくなります。でも、実際の体は、そんなに単純ではありません。
理由は、3つ。
- 反応は、ATPだけじゃない:一酸化窒素、活性酸素種、さまざまな細胞内シグナルが、複雑に関わります
- CCOだけで、全部は説明できない:重要な候補として研究されてきましたが、PBMのすべてを、この仕組みだけで説明できるわけではない。まだ研究が続いている分野です
- “どこで確かめた実験か”を、分けて見る:細胞(シャーレ)か、動物か、実際に人に照射したのか。シャーレの細胞で起きたことが、そのまま私たちの顔で同じように起こるとは限りません
「仕組みとして考えられていること」と、「実際に人の肌で確認されていること」は、分けて見る。 これは、美容の情報を見るときに、私が大切にしたいところです。
「何nmか」だけでも、決まらない
LEDを調べると、633nm・830nmなどの数字(波長)を見かけます。
でも、波長の数字だけでは、決まりません。
PBMでは、波長だけでなく、どのくらいの強さの光を/どのくらいの時間/どのくらいの量、届けるのかという”照射条件”も、重要だからです。
つまり——同じ「赤色LED」でも、機器によって、光の強さや、使う時間は、違います。
だから、「赤い光だから、同じ」とは、言い切れないんです。ここは、LED美顔器を見ていくうえで、覚えておきたいポイントです。
「強ければ強いほどいい」でも、ない
もうひとつ、面白いのが、光の”量”。
「たくさん当てたほうが、効くのでは?」と思いますよね。
でも、PBMは、”多ければ多いほど効く”という単純な関係ではないことが知られています。
少なすぎれば、十分な反応が起こらないかもしれない。
かといって、多くすればするほど良いとも、限らない。
これ、薬と同じです。「量が多い=よく効く」ではなく、目的に合った量がある。光も、「何を、どれだけ届けるのか」という視点が必要なんですね。
まとめ:LEDは「ただ光っている」だけじゃなかった
LEDについて、私がいちばん分からなかったのは、「光を当てるだけで、どうして肌に作用するの?」でした。
でも、その間には、ちゃんと細胞がありました。
- LEDは“焼く”のではなく、細胞に反応を起こす(=PBM)
- ミトコンドリア → ATP → シグナル → 線維芽細胞 → 肌、と作用が伝わる可能性
- でも、「当てればコラーゲンが増える」とは、単純に言えない(研究途上・細胞実験と人は別)
- 波長の数字だけ・強さだけでも、決まらない
ただ光っているだけに見えるLED。
でも、その光を受け取った細胞の中では、さまざまな反応が起きている可能性があります。
「光を当てるだけ」の奥には、思っていたよりずっと複雑な仕組みがありました。


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